友達が地元に帰る。
ちょっとした帰省などではなく、地元の企業に転職するらしい。
いわゆる「Uターン転職」というやつだ。
小学校からの友達の決断。
もちろん応援しているけれどやっぱりちょっと寂しいもんだ。
小学校からの付き合い

その友達とは小学校からの付き合いだ。
青森県でも田舎の地域だったから各学年1クラスしかなくて、小学校・中学校ずっと同じクラスで過ごした。
そして、高校は相談したわけでもないけれど同じ工業高校。
ついでに部活も同じバスケットボール部だったから、嫌でも一緒に過ごす時間は長かった。
お互い就職して県外に出る

高校3年生となって進路を決める時期がきた。
工業高校生のほとんどは就職する。
自分も例に漏れず就職を選んだ。
県内か県外か迷ったけれども、都会に行ってみたい・地元にはない大企業で働きたいという理由で県外に出ることに決めた。(今思うと安易だけど)
さすがにこういう決断ばかりは「一緒に県外いこうぜ~」なんてノリで決められないと当時思っていたかはさすがに覚えてないけど、進路の細かい話はそんなにしていなかった思う。
それでもその友達の就職先は僕が就職する隣の会社でビックリした記憶がある。
近くにいるだけで心強い

県外に出ても近くで働いていた自分達は何かあるたびに遊んだ。
誕生日だったり、愚痴を聞いて欲しかったり・・・。
なんなら何にも無くても夜中にファミレスに集合して近況報告したりなんかした。
当時の自分は世間知らずなまま1人で関東に出てきた18歳。
周りに知り合いなんていない。
そんな中で気心が知れた友人が近くいるというのはとても心強かった。
結婚して子供が出来た友人

県外就職してからはお互い色々あった。
自分が仕事が辛くて地元に帰りたいって愚痴る日々もあれば、アイツが地元で彼女を作って「俺は帰る!」なんて言ってたのに結局別れたり・・・
そんな友人も結婚し子供が出来て父となった。
それからは「地元で子供を育てたい」と言い初め、まさか本気じゃないだろうと思っていたけれど話はトントン拍子で進んでいった。
引き止められるはずもない

「仕事はどうすんの?給料下がんじゃないの?」
「奥さんは地元出身じゃないのに連れて帰って大丈夫?」
「ただでさえ若者が少ないのに子供の学校は大丈夫なの?」
こんな風にその友達が不安になりそうな言葉を、自分がこっちに取り残されるような気がして投げかけそうになったけれども結局言わなかった。
地元に帰りたいって気持ちはとても理解できるし、友人夫婦はどちらも地元から離れて働いていたから、どちらかの親元に近い方に帰った方が色々と良いだろう。
そもそも給料とかそんな問題は友人夫婦ですでにどうするか話し合って決めた結果に違いない。
なんなら自分も転職活動をしていたから面接のアドバイスなんかして応援した。
友達は無事に転職試験に合格して数か月後には地元に帰ることになった。
嬉しくもあり、ちょっと寂しくもあった。
県外で会う最後の日

「最後に飯でも行こうや」
そんな感じで昼間から2人で出掛けた。
20歳を過ぎてからは遊ぶと言っても飲みばかり。
昼間から会うなんて久しぶりだった。
最後に行った飯屋はその友達が初めて買った車で連れて行ってくれたステーキ屋だった。
今回は自分が車を出した。
あっけないサヨナラ

最後に飯に行ったけれど、別にこの文章に書いてあるようなちょっと気持ち悪い友情話をしたわけでもなく、驚くほど普通に時間が過ぎた。
友達を家に送って解散する時も、いつもと変わりのない「またな!」ぐらいの感じで車のドアは閉じられた。
なにかしら感謝の言葉的なのを伝えたり餞別を送るなりすれば良かったのかもしれないけど、いざ会ってみるとなんだか実感がわかなかった。
事実アイツからも「最後あっけなさ過ぎてビビったわ笑」ってLINEがきた。
もっと寂しいもんかと思っていたけれど意外となんてことなかった。
しょっちゅう連絡とってるし、地元に帰れば会えるのだから。
むしろ寂しいのはその友人と同じ会社で働いてきた同僚達だろうなと思う。
俺達のくされ縁もここまでか?

小学校から高校卒業まで同じ学校・同じクラス。
おまけに部活も一緒で県外就職したと思ったら隣同士の会社。
ここまで一緒ならこれからも同じ地域に住んで、なんなら隣に家でも建てるもんだとすら思ってた。
お互い仕事が忙しくなったり家庭が出来たりして遊ぶ回数どんどんは減っていったけれども、それでもいつでも会える距離に地元の友達がいるというだけで、もの凄い安心感があったんだと今では思う。
なんとなく高校の卒業式を思い出した。
「またな!」
「地元に帰省したら連絡するわ!」
そんなこと言っておいて、それ以来会っていない同級生が何人もいる。
「俺たちの腐れ縁もここまでか?いや、離れるのは距離だけよ!」
そんなことが書かれた年賀状が友人から届いた。
気軽に遊べる距離ではなくなったけれども、きっと自分達の関係性はこれからも変わらないだろう。